|安城の家|
House in Anjo-City,Aichi,Japan
所在地:愛知県安城市
用途:専用住宅/新築
構造:木造 地上2階
敷地面積:149.30㎡
建築面積:58.54㎡
延床面積:105.73㎡
構造設計:海野構造研究所
location:Aichi Japan
use:residence
structure:Wood,2
site area :149.30㎡
building area :58.54㎡
total floor area :105.73㎡
structure design:Unno engineers‚inc.
photo : Tomoki Hahakura
|背景|
明治用水の豊かな水に恵まれた農業先進都市の歴史があり、南に流れる矢作川と豊かな田園風景に周囲を巡る安城市桜井地区。
自動車関連企業などの進出が大きい豊田市や碧南市の工業都市と隣接し、リンクする住宅団地や人口増による駅前商業の発展により都市化が進んできた。
進むまちづくりの中で、駅前再開発に係る道路拡張のため、整形区画された換地へ移転せざる得なくなった。
換地先は、今までの状況であった不整形な住宅密地と狭路が多く残る環境から、南面に面した至極当然な空間と形状が整理された敷地となった。
この地で永く生活を送る、子育てを終えた70代を迎える夫婦の終の棲家。
|主旨|
「個室」と「個室の延長」をつくる。
年月によるライフスタイルの変化がある。例えばよく耳にする、寝室のベッドのサイズがダブルサイズからシングルサイズ2床へ、そして夫婦の寝室別室の生活。
睡眠をきっかけとしたパーソナルエリアの領域を拡大していくことにより生まれた変化と考えれば、自分自身の身体感覚の延長とも言える。
この小さな寝室での小さな変化を、1棟の箱の中で自分の身体感覚の延長としてとらえられる住宅を考えた。
|計画|
共有空間のリビングダイニングを無くし、「個室」と個人の部屋(身体感覚)という領域を拡大した「個室の延長」を配置する。
個のために、「個室」と「個室の延長」の1組をつくる。
個と個のため、1棟内に2組配置が必要となる。また夫婦というカテゴリーのため、最低限互いを感じ得れる必要があり、上下に積層させ「個室の延長」を吹き抜けを介することで気配をつなげた。
道路沿いのファサードを大きく占める開口部からの採光と日射熱もまた、気配をつなぐための機会とし、積極的に取り込んだ。
構造計画に必要な耐震壁は「個室」と「個室の延長」の領域外に配置できるように、生活に必要な収納や水回り(キッチン、トイレ、浴室、洗面室)に含ませて配置計画した。
|展望|
個の領域を守り、拡大し、それを包括する箱(個人のシェルターのような)。
個と個(夫婦)のカタチからはじめるこの箱での暮らし方は、「交わる」から気配を感じ得れる「添う」空間を目指した。
また、これから個のカタチの暮らしに成り行く時の「添う」とは、採光や、雨風の音、まちの生活音、気候の肌ざわり、いつかの個の気配、社会との少しの距離(道路境界からの余白空間)がある暮らしと考える。
個と社会がダイレクトにつながれるリアルタイム社会。重い荷物も運び終えた世代だから暮らせる空間、個から子の世代の「個と個」につなぐ建築を増やすことが郊外にこそ必要ではないかと考えている。